みなし残業とは?
違法にならないように
正しく理解することが大切!
「みなし残業」は毎月固定の給与を支払う仕組みで、給与計算が楽になるなどのメリットがあるため、導入を検討している企業もあるでしょう。しかし、制度について正しく理解しなければ労働基準法違反となる可能性があるので注意が必要です。
本記事では、みなし残業について詳しくみていきましょう。みなし残業の2つの種類や導入するメリット、みなし残業のリスクなどを、わかりやすく解説します。
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みなし残業の意味と仕組み
みなし残業とは、あらかじめ見込んだ残業代や深夜割増賃金などを基本給に含めて支払う給与形態のことです。外回りの多い営業職など、労働時間を正確に把握するのが難しい職種で採用されている仕組みで、実際の残業時間に関わらず固定の給与が支払われます。
このあらかじめ見込んでおく残業のことを「みなし残業」といい、何時間分の残業代を給与に含めるかは企業によって異なります。みなし残業時間については、求人票や雇用契約書などに明記しなければなりません。
みなし残業が実際の残業時間よりも多ければ、本来の残業代よりも多く支給されることになり、残業時間が少なければ従業員にとってメリットの大きい仕組みです。また、企業側も給与計算が楽になります。
みなし残業は大きく分けて2つ種類がある
みなし残業は、「みなし労働時間制」と「固定残業代制」の大きく2種類に分かれます。この2つは似ているようで異なる仕組みのため、違いを理解しましょう。
以下で、みなし労働時間制と固定残業代制のそれぞれについて解説します。
みなし労働時間制
みなし労働時間制とは、実際に働いた時間に関わらず毎月の労働時間を固定して給与を計算する仕組みです。オフィスで仕事をする時間が短く、実際の労働時間を把握しにくい営業職や在宅勤務の従業員の給与形態として採用されています。みなし労働時間制では、法定労働時間の1日8時間を超えた分をみなし残業とします。例えば、1日の労働時間を9時間と想定して給与を支給する場合、みなし残業は1時間です。
みなし労働時間制は、さらに以下の3つに細かく分類されます。
- 事業場外労働
- 専門業務型裁量労働制
- 企画業務型裁量労働制
上記3つについて、以下で詳しくみていきましょう。
事業場外労働
事業場外労働は、その名のとおり事業場(オフィスや店舗など仕事をする場所)以外の場所で働く職種を対象としたみなし労働時間制です。社外での業務が多く、正確な労働時間の把握が難しい場合に多く活用されています。
事業場外労働のみなし労働時間制を適用するには、「すべてまたは一部の労働時間を事業場外で業務を行っていること」「労働時間の算定が難しいこと」の2点を満たさなければなりません。そのため、オフィス以外の場所で勤務していても指揮命令を受けている場合などは「労働時間の把握が困難」とはいえず、事業外労働の対象とならないケースがあります。
専門業務型裁量労働制
裁量労働制は、専門性の高い特定の業務で働き方の自由度を高めるために作られた制度です。専門業務型と企画業務型があり、専門業務型は厚生労働大臣が指定した19の業務が対象で、例えば以下のような職種や業務で採用されています。
- 技術職や研究職
- 情報システム関連の業務
- 取材や編集業務
- プロデューサー・ディレクター
- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士 など
上記のような業務は管理者による指示や決められた労働時間で働くよりも、本人の裁量で業務を進めるほうが効率的という考えから、固定のみなし労働時間制が活用されています。
企画業務型裁量労働制企画業務型裁量労働制は、専門業務型と同様に本人の裁量で業務を行うほうが成果や効率が期待できる場合に適用されるみなし労働時間制です。対象となる業務は専門業務型よりも少ないのが特徴で、企業の本社などで勤務する以下のような職種のうち、企画、立案、調査などを行う従業員が対象とされています。
- 経営企画
- 財務・経理
- 人事
- 広報 など
上記の職種でも、企画や調査などを行わない場合には、企画業務型裁量労働制は適用できません。
固定残業代制
固定残業代制とは、あらかじめ企業が定める時間分の残業代を給与に含め、実際の残業時間に関わらず固定の残業代を支払う給与形態のことです。例えば、実際は残業時間がゼロだったとしても、企業が定めた時間分の残業代が支払われます。みなし労働時間制は労働時間全体をみなし時間として算定するのに対して、固定残業代制は残業時間だけを対象としているのが違いです。
「残業代が固定」と聞くと「残業時間が多くなっても支払う給与は同じ」と考える人もいるかもしれませんが、実際の残業時間がみなし残業時間を上回った場合は、超過分について割増賃金が発生する点に注意してください。超過分の残業代を支払わなければ、労働基準法違反となります。
みなし残業の制度を導入するメリット
みなし残業の制度を導入すると、企業と従業員にそれぞれ以下のようなメリットがあります。
- 企業:残業代や割増賃金などを計算する必要がない
- 従業員:金銭的に得する可能性がある
それぞれのメリットについて、以下で詳しくみていきましょう。
企業:残業代や割増賃金などを計算する必要がない
みなし残業の場合、あらかじめ労働時間や残業時間を定めて固定の給与を支払うため、一人ひとりの従業員に対して残業代や割増賃金を計算する手間が省けるのがメリットです。給与計算は毎月発生する業務で、従業員数が多いほど給与担当部署の業務負荷が上がるため、「毎月、給与計算の締め日付近は残業が増える」という給与担当者の方もいるでしょう。
みなし残業を導入すると基本的に毎月一律の給与を支払うことになり、給与計算に関わる業務負荷の軽減が期待できます。
従業員:金銭的に得する可能性がある
みなし残業は実際の労働時間や残業時間に関わらず固定の給与が支払われるため、従業員は金銭的に得となる可能性があります。例えば、みなし残業時間が20時間で実際は5時間しか残業をしなかった場合、15時間分の残業代がプラスで支給されることになり、従業員にとって大きなメリットです。
「なるべく残業を減らそう」というモチベーションにつながり、業務の効率化に積極的に取り組む従業員が増える可能性もあります。業務効率の向上で生産性が上がることは、企業にとってもメリットといえます。
みなし残業のリスク
みなし残業の制度にはメリットもありますが、制度をしっかり理解して導入しなければ従業員とトラブルになったり違法とされたりするリスクがあるため、注意してください。
固定残業代制の場合は、実際の残業時間がみなし残業時間を上回ると残業代が追加で発生します。そのため、残業時間を全く管理しなくてよいというわけではなく、残業時間を把握したうえで必要な場合には残業代の追加分を計算して支払いが必要です。追加の残業代を支払わないと労働基準法違反となり、未払い賃金の支払いを求めて従業員から訴訟を起こされるおそれがあります。
みなし労働時間制の場合は、「事業場外で勤務する従業員が対象」「裁量労働制の対象となる職種に限られる」など、細かくルールが定められている点に注意が必要です。無条件に導入できるわけではありません。
勤怠管理の活用がおすすめ!法律を守りながらみなし残業を導入してみよう
みなし残業は、正しく活用すれば企業にも従業員にもメリットのある仕組みです。しかし、「労働時間を全く管理しなくてよくなる」「固定の残業代以上の支払いは不要」など誤った認識で導入すると労働基準法違反となる可能性があるため、注意してください。
法律に違反しないよう適切に労働時間を管理するには、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
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