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年末調整の計算方法を徹底解説!
「毎年年末調整を実施しているが、なんとなくしか理解できていない」という人もいるのではないでしょうか。年末調整は所得税を正しく納めるための手続きで、源泉徴収との差額を精算するために行います。
本記事では、年末調整について基本的な情報をわかりやすく解説します。必要書類や計算方法を紹介するので、しっかりチェックしておきましょう。
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年末調整とは?
年末調整とは、源泉徴収額と正しい税額の差を1年の終わりに精算する手続きのことです。給与や賞与からあらかじめ所得税を差し引くことを源泉徴収といい、従業員を雇用する事業者は源泉徴収を行う必要があります。
源泉徴収されるのは概算の税額なので、扶養家族の人数や保険の加入状況、住宅ローンの有無などに応じた所得控除は反映されていません。そのため、年末調整で正しい税額を計算して、差額を精算します。
年末調整の結果、源泉徴収額が多すぎた場合は払いすぎた分を還付し、源泉徴収額が少なかった場合は追加の税金を徴収します。
年末調整に必要な書類の種類
年末調整には、4つの書類が必要です。それぞれどのような書類なのか以下で詳しく紹介するので、チェックしておきましょう。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、従業員の扶養家族について記入する書類です。扶養家族がいる場合は、控除が適用されます。
以下の5つのいずれかに該当する親族がいる、もしくは従業員本人が該当する場合は、控除の対象となります。
- 源泉控除対象配偶者
- 16歳以上の扶養家族
- 障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生
- 他の家族が控除を受ける扶養親族
- 16歳未満の扶養親族
扶養家族の有無を確認する書類のため、扶養家族がいない従業員も提出が必要です。
給与所得者の保険料控除申告書
「給与所得者の保険料控除申告書」は、従業員が加入している各種保険について記入する書類です。以下のような、個人で支払っている保険料について記載します。
- 一般生命保険料
- 介護医療保険料
- 個人年金保険料
- 地震保険料
- 社会保険料
- 小規模企業共済等掛金
上記の保険料を支払っている場合、1年間の総支払額に応じた控除が受けられます。毎年10月頃に保険会社から送付される「控除証明書」を添付する必要があるため、年末調整の時期まで紛失しないよう注意が必要です。
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
「基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」は令和2年度から新様式となった書類で、次の3つを申告するために提出します。
- 基礎控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 所得金額調整控除
「基礎控除申告書」欄には、1年間の合計所得金額の見積額を記入します。「控除額の計算」欄の当てはまる箇所にチェックを入れ、基礎控除の額を判定します。
配偶者控除もしくは配偶者特別控除を受ける場合は、「配偶者控除等申告書」欄への記入が必要です。従業員本人の合計所得額が1,000万円以下なら、配偶者の所得金額に応じた控除が受けられます。
「所得金額調整控除申告書」欄は、給与所得控除の引き下げによる影響を軽減する制度を利用するために記入する欄です。1年間の所得が850万円を超えており、23歳未満の子どもや特別障害者等を有する場合は控除が受けられます。
給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」は、住宅ローン等を利用して住宅を購入・新築・リフォームした場合に提出する書類です。一定の条件を満たしている場合、この書類を提出すると住宅ローン控除が受けられます。
「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」によって住宅ローン控除が受けられるのは控除の適用2年目以降で、初年度は従業員が個人で確定申告しなければなりません。
添付資料として、住宅金融支援機構やローンを利用した金融機関の残高証明書が必要です。
給与所得者の年末調整の流れ・計算方法
ここからは、年末調整の流れと計算方法についてみていきましょう。以降で、それぞれのステップで実施する内容と計算方法を紹介します。
①給与額・源泉徴収税額を算出する
はじめに、従業員ごとに1年間の給与額と源泉徴収税額を算出します。源泉徴収税額とはあらかじめ給与から差し引いた税額で、給与額は社会保険料や源泉徴収税額を差し引く前の金額を合計したものです。
所得税の計算には源泉徴収税額や社会保険料が差し引かれる前の、給与と賞与を合わせた総支給額を算出しておく必要があります。
②給与所得控除額を差し引く
源泉徴収税額の差引前の給与額を算出したら、そこから給与所得控除額を差し引いて給与所得を求めます。給与所得控除額とは給与から経費として控除できる金額のことで、給与額によって控除額が決められています。
給与所得額は、以下の計算式で求められます。
給与所得額=給与額-給与所得控除額
令和2年分以降の給与所得控除額は、以下のとおりです。(2022年1月時点)
- 給与額
- 給与所得控除額
- 1,625,000円まで
- 550,000円
- 1,625,001円〜1,800,000円
- 給与額×40%-100,000円
- 1,800,001円〜3,600,000円
- 給与額×30%+80,000円
- 3,600,001円〜6,600,000円
- 給与額×20%+440,000円
- 6,600,001円〜8,500,000円
- 給与額×10%+1,100,000円
- 8,500,001円以上
- 1,950,000円(上限)
参考:国税庁「No.1410 給与所得控除」
ただし、給与額が660万円未満の場合は上記の表に関わらず、年度に応じた「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」から給与所得額を求めます。
③所得税額を差し引く
給与所得額を算出したら、そこから所得控除額を差し引き、所得税を算出する際に用いる課税所得額を求めます。計算式は以下のとおりです。
課税所得額=給与所得額-所得控除額
課税所得額に1,000円未満の端数が出たときは、切り捨ててください。
所得控除額には、次のようなものが含まれます。
- 基礎控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 扶養控除
- 住宅ローン控除 など
それぞれの控除額は、従業員が提出した各申告書の内容をもとに算出します。
④所得税率をかけて控除額を差し引く
所得控除額を差し引いて課税所得額を算出したら、所得税額が求められます。所得税額を求める計算式は、以下です。
所得税額=課税所得額×所得税率-控除額
所得税は、課税所得額に応じて税率と控除額が決まっています。課税所得額に応じた所得税率と控除額は、以下のとおりです。(2022年1月時点)
- 課税所得額
- 所得税率
- 控除額
- 1,000円〜1,949,000円
- 5%
- 0円
- 1,950,000円〜3,299,000円
- 10%
- 97,500円
- 3,300,000円〜6,949,000円
- 20%
- 427,500円
- 6,950,000円〜8,999,000円
- 23%
- 636,000円
- 9,000,000円〜17,999,000円
- 33%
- 1,536,000円
- 18,000,000円〜39,999,000円
- 40%
- 2,796,000円
- 40,000,000円 以上
- 45%
- 4,796,000円
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
ここで求められるのが、本来支払うべき所得税額となります。
⑤超過額もしくは不足額を計算・精算する
本来支払うべき所得税額を算出したら、源泉徴収税額と比較して超過額もしくは不足額を求めます。所得税額よりも源泉徴収税額のほうが多かった場合、税金を払いすぎているので超過分を還付しなければなりません。一方、所得税額よりも源泉徴収税額が少なかった場合は、不足分を徴収する必要があります。
年末調整の計算例
ここまで、年末調整の流れと計算方法について解説しましたが、実際の計算例もチェックしておくとさらにイメージしやすいです。
以降では、以下の2例について実際の計算式をみていきましょう。
- 配偶者に所得がなく、配偶者控除の適用を受ける場合
- 配偶者に所得があり、配偶者特別控除の適用を受ける場合
配偶者を持つ従業員も少なくないため、それぞれの計算例をチェックしてみてください。
例①配偶者に所得がなく、配偶者控除の適用を受ける場合
配偶者に所得がなく、配偶者控除の適用を受ける場合について、年末調整を計算してみましょう。給与額等は以下のとおりとします。
- 年間給与総額(他の所得なし)
- 5,870,000円
- 同上の給与に対する徴収税額
- 140,536円
- 控除した社会保険料等(給与控除分)
- 836,110円
- 支払った一般の生命保険料のうち旧生命保険料分
- 50,200円
- 支払った個人年金保険料のうち新個人年金保険料分
- 56,000円
- 支払った損害保険料のうち地震保険料分
- 45,000円
引用:年末調整のしかた 設例1
はじめに、給与総額が660万円未満なので「給与所得控除後の金額の算出表」で給与所得額を求めます。給与総額が587万円の場合、給与所得額は4,254,400円です。
次に、給与所得額から所得控除額を差し引きます。保険料は保険の種類によって控除額が異なり、それぞれの控除額は以下です。
- 保険
- 控除額
- 社会保険
- 836,110円(支払った全額)
- 生命保険
- 旧生命保険の控除額:37,550円
新個人年金保険の控除額:34,000円
合計:71,550円
- 地震保険
- 45,000円
所得がない配偶者を扶養しており、合計所得金額が2,400万円以下なので、配偶者控除・扶養控除・基礎控除は以下のようになります。
- 配偶者控除
- 380,000円
- 扶養控除
- 380,000円
- 基礎控除
- 480,000円
各控除額を合計すると2,192,660円となり、これを給与所得から差し引いたものが課税所得です。この場合、課税所得は以下の式で求めます。
4,254,440円-2,192,660円=2,061,740円
1,000円未満は切り捨てるため、課税所得額は2,061,000円です。課税所得額を算出したら、以下の式で所得税額を求めます。
2,061,000円×10%(所得税率)-97,500円(控除額)=108,600円
令和19年までは所得税額の2.1%を復興特別所得税として収めるため、本来納めるべき所得税は以下となります。
108,600円×102.1%(復興所得税率)=110,800円(100円未満切り捨て)
源泉徴収額は140,536円なので、本来の所得税と比較すると29,736円の超過が発生しています。この超過分を本人に還付すれば、年末調整は完了です。
例②配偶者に所得があり、配偶者特別控除の適用を受ける場合
次に、配偶者に所得があり、配偶者特別控除の適用を受ける場合について計算してみましょう。給与額等は以下のとおりとします。また、この例では、本年最後に支払う給与の税額計算を省略せずに年末調整を行うものとします。
- 年間給与総額(他の所得なし)
- 7,074,500円
- 同上の給与に対する徴収税額
- 216,842円
- 控除した社会保険料等(給与控除分)
- 1,084,604円
- 支払った一般の生命保険料のうち旧生命保険料分
- 53,000円
- 支払った個人年金保険料のうち新個人年金保険料分
- 59,000円
- 支払った個人年金保険料のうち旧個人年金保険料分
- 89,000円
- 支払った損害保険料のうち旧長期損害保険料分
- 28,000円
- 配偶者の給与所得
- 1,250,000円
- 扶養親族
- 1人
- 特定扶養親族
- 1人
引用:年末調整のしかた 設例2
この場合、給与総額が660万円以上なので給与所得額は以下の式で求めます。
7,074,500円×90%-1,100,000円=5,267,050円
各保険料の控除額、配偶者特別控除額、扶養控除額は以下のとおりです。
- 社会保険料の控除額
- 1,084,604円(支払った全額)
- 生命保険料の控除額
- 38,250円
- 個人年金保険の控除額
- 47,250円(一番高額となる旧個人年金の控除額を適用)
- 地震保険の控除額
- 15,000円(上限額)
- 配偶者特別控除額
- 110,000円
- 扶養控除額
- 1,010,000円
- 基礎控除額
- 480,000円
上記の控除額を合算すると、2,785,104円となります。これを給与所得額から差し引くと、課税所得額は以下のとおりです。
5,267,050円-2,785,104円=2,481,000円(1,000円未満切り捨て)
課税所得額が2,481,000円の場合、復興特別所得税も含めた所得税は以下のようになります。
2,481,000円×10%(所得税率)-97,500円(控除額)×102.1%(復興所得税率)=153,700円(100円未満切り捨て)
これを源泉徴収税額216,842円と比較すると、63,142円の超過となります。超過分の一部はまだ徴収されていない本年最後(12月給与)の税額8,070円(参照:年末調整のしかた 設例2)に充当し、残りの55,072円を本人に還付して年末調整は完了です。
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年末調整は、源泉徴収税額と本来支払うべき所得税の差額を精算する手続きです。年末調整を行う場合は、必要な書類や計算方法についてしっかり把握しておきましょう。
本記事で計算例を紹介したとおり、年末調整の計算は各控除を考慮しなければならず、計算は複雑です。年末調整を正確かつ効率的に行いたいなら、ソフトやツールを活用しましょう。
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